ロボット(R.U.R.)

チャペック作 千野栄一訳

数年前だろうか、AIや人工知能のニュースばかりが取り沙汰され、様々な憶測を招き、10年後に消える職業まで取り上げられるほど過熱したが、コロナウイルスの蔓延とともに息を潜めてしまった。現段階では、AIが人間に取って代わる、人間のように思考し、判断できる可能性はかなり低いようだが、人間と機械の古くて新しい関係を考えていると、昔読んだチャペックの小説が思い浮かんだ。カレルチャペックは、チェコが生んだ才能豊かな作家であり、小説のみならず、戯曲やエッセイまで手掛けている。愛犬との生活を描いた「ダーシェンカ」や、園芸をテーマに書いた「園芸家12カ月」は、どれもユーモアにあふれ、読み飽きない作品となっている。

さて、表題の作品は、ロボットの語源にもなっているほど有名な戯曲だが、単に人間対ロボットの争いを描こうとしているのではなく、背後により深い作者のメッセージが隠されているように思われる。戯曲の魅力の一つに、流れるようなテンポの会話があげられるが、この作品も100年前に書き上げられたとは思えないほど読みやすく、翻訳も優れている。未だに新訳が発行されており、これからも読み継がれる名作だと思う。

2021年3月31日